未消化有給休暇の買い取りについての考え方

企業は労働者の未消化有給休暇の買い取りをしなければならないのでしょうか?その辺りの規定や現状を教えてください。

未消化有給休暇の買い取りは義務ではなく、特定の場合を除いて買い取ることは認められていません。

未消化の有給休暇について労働者から買い取りを求められるケースがありますが、この買い取りは企業にとって義務なのでしょうか?本記事では有給休暇に関する周辺知識と共に、買い取りに関する考え方を紹介します。

有給休暇の発生条件

まずはおさらいとしてベトナムの有給休暇制度について簡単に説明します。労働法113条1項、2項には年次有給休暇の発生条件として以下のように規定しています。

1. Người lao động làm việc đủ 12 tháng cho một người sử dụng lao động thì được nghỉ hằng năm, hưởng nguyên lương theo hợp đồng lao động như sau:(同一の使用者に満12 か月勤務した労働者は,以下のように,労働契約に従った賃金全額を得る年次有給休暇を取得できる。)

a) 12 ngày làm việc đối với người làm công việc trong điều kiện bình thường;(通常の条件で勤務する者については12 日)

b) 14 ngày làm việc đối với người lao động chưa thành niên, lao động là người khuyết tật, người làm nghề, công việc nặng nhọc, độc hại, nguy hiểm;(未成年の労働者,障害者の労働者,困難,有害,危険な職種,業務を行う労働者については14 日)

c) 16 ngày làm việc đối với người làm nghề, công việc đặc biệt nặng nhọc, độc hại, nguy hiểm.(特別に困難,有害,危険な職種,業務を行う労働者については16 日)

2. Người lao động làm việc chưa đủ 12 tháng cho một người sử dụng lao động thì số ngày nghỉ hằng năm theo tỷ lệ tương ứng với số tháng làm việc.(同一の使用者に対する勤務期間が12 か月に満たない労働者の年次有給休暇は,勤務した月数に相当する割合の日数である。)

例えば上記aに当てはまる労働者の場合で考えてみます。同じ企業で1年働いた場合は2年目に当たる最初の月から12日分の年次有給休暇が与えられることになりますので、その最初の月に12日分の有給休暇を一気に使うことも認められています。

一方上記2の場合ですが、こちらは就業期間が12カ月未満の労働者に対する有給休暇の規定となります。仮に1年働いた場合に12日の有給休暇を付与する会社の場合、毎月1日ずつ有給休暇が付与されていくということになりますので、1年目は働いた月数以上の有給休暇を一気に使うということはできません。

因みにこの有給休暇の付与日数は最低日数を規定したものですので、この付与日数を上回る制度を企業独自で設けることは問題ありません。

またこの付与日数は同一企業に5年継続して勤務するごとに1日分追加されていきます。日本の有給休暇制度では付与日数の上限が20日と定められていますが、ベトナムは有給付与日数に上限はありませんので理論上は継続勤務年数に応じて無限に増えていくことになります。(同法第114条)

年次有給休暇の買い取りについて

現在の労働法では年次有給休暇の買い取りについて同法113条3項に規定されています。

3. Trường hợp do thôi việc, bị mất việc làm mà chưa nghỉ hằng năm hoặc chưa nghỉ hết số ngày nghỉ hằng năm thì được người sử dụng lao động thanh toán tiền lương cho những ngày chưa nghỉ.(退職,失職により,年次有給休暇を取得していない,又は年次有給休暇日数を全て消化していない場合,使用者は未取得の有給休暇につき賃金で清算することができる。)

上記の通り現行法では有給休暇の買い取りは退職や失業の場合においてのみ認められるということになります。しかし改正前の労働法(2012年)では「退職、失業、その他の理由」と記載されていましたので、在籍中の労働者から未消化有給休暇の買い取りが慣例として現在も行われている企業がそれなりにあるのではと推察できます。

未消化有給休暇の買い取りは違法?

では退職、失業以外の理由で労働者の未消化有給休暇を買い取ることは違法なのでしょうか?必ずしもそうとは言えない理由として同法の第4条1項が挙げられます。

1. Bảo đảm quyền và lợi ích hợp pháp, chính đáng của người lao động, người làm việc không có quan hệ lao động; khuyến khích những thỏa thuận bảo đảm cho người lao động có điều kiện thuận lợi hơn so với quy định của pháp luật về lao động.(労働者,労使関係なく業務を行う者の正当な権利と利益を保障する;労働に関する法律の規定と比較して,より有利な条件を労働者に保障する合意を奨励する。)

労働法は労働者に対する扱いの最低基準を定めたものですので、その基準を超えて労働者にとってより有利な条件になるものであれば認められると解釈できます。つまり未消化の有給休暇を買い取ることが労働者にとってより有利となるのであれば違法性はないと考えられます。これらを纏めますと事例として以下の3パターンの対応が見えてきます。

①労働者は買い取り希望、企業は買い取りたくない→企業が買い取りに応じる義務はない

➁企業は買い取りを希望、労働者は買い取ってほしくない→企業が労働法に抵触

➂労働者は買い取り希望、企業も買い取り希望→労使合意且つ労働者有利な条件で買い取り可

因みに➂については労働・傷病兵・社会問題省が公文書「514/ATLD-CSBHLD」において上記のように見解を示している一方で、ホーチミン市労働総連合会は買い取りを「退職、失業した場合に限る」と文書を出しています。このことから➂の事例についてはまだ議論の余地がありそうです。

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