ベトナムにおける賄賂と謝礼金の認識

従業員教育の一環として外部からの金銭授受について啓発を行いたいと思っています。どういった点に注意して伝えればいいでしょうか?

何が不正とみなされるかの認識の違いが起こりえますので、各事例を用いて具体的に説明することが大切です。またベトナムにおける「賄賂」と「謝礼金」の認識について日本人のそれと多少ズレがあることも理解しておいたほうがいいでしょう。

ベトナムでビジネスをするに当たってよく話題に上がる従業員の不正な金銭受給について。これらを排除するために日々試行錯誤が行われています。従業員教育もその一つとなりますが、今回は個別に金銭を受ける2つの言葉について解説していきます。

賄賂は悪いこと、じゃあ謝礼金は?

ベトナム語にも日本語の「賄賂」とほぼ同じ定義をもつ「hối lộ(ホイロ)」という単語があります。hối lộは悪い行為というのは全ベトナム人共通の認識で、ここ最近は役人や警察などの収賄に対する更迭報道がよく見られるようになりました。民間単位でも同様に「hối lộはやめよう」という動きが表面的には浸透しているように思われます。ですので従業員に対して「金銭を不正受給してはいけません」と言ったところで従業員からすれば「そんなことは分かっている」という反応がオチで、啓発としてはあまり意味がないと言えるでしょう。

ただ同じ金銭を受け取るとしても本人が不正受給と認識していないケースが見られます。いわゆる「謝礼金」と呼ばれる存在です。謝礼金とはベトナム語で「tiền cảm ơn(お礼のお金)」などと言われたりしますが、この謝礼金と賄賂の境界が曖昧で、これが日本人の頭を悩ませることになります。

賄賂と謝礼金の境界

日本でも何か苦労をかけたときや助けてもらったときにお礼としてお金を渡すことはあります。基本的にベトナムの謝礼金も多くはその場合に行われるので、謝礼金を受けること自体が悪いことという認識はありません。しかし各ケースを見ていますと「それは謝礼金ではなく賄賂では?」と思いたくなることがありますので、以下で事例と共にベトナム人の認識を確認していきます。

謝礼金か賄賂か

①交通違反をした際にお金を払って見逃してもらった→賄賂

②役所で必要書類を満たしてないがお金を払って受理してもらった→賄賂

③役所で申請料金以外のお金を払って早く対応してもらった→謝礼金

④購買で特定の業者を選んだことによりお金を受け取った→グレーゾーン

⑤お金を払って採用の便宜を図ってもらった→グレーゾーン

それぞれのケースについての意見

①と②はベトナム人の誰に聞いても「賄賂」と答えます。金銭を受け取って法令で定められていることを覆すのは賄賂と共通認識しているようです。③は「謝礼金」と答える人が大半です。優先的に処理するために便宜を図ってくれたお礼、といったところでしょうか。④と⑤は「場合による」という意見が多くなります。

④の場合、他に有力な業者がいるにも関わらず金銭を受け取って敢えて有力でない業者を選んだ場合は「賄賂」、実際に吟味して有力な業者を選んだ結果、金銭を受け取った場合は「謝礼金」という認識となります。また⑤の場合は他に優秀な候補者がいるにも関わらず金銭を受け取って該当者を採用した場合は「賄賂」、それ以外でお金を払って採用の便宜を図ってもらったなどは「謝礼金」と考える人が多くなっています。

実際に従業員を教育する場合、会社活動を通じた関係からの金銭授受をしてはいけないとした上で、個別の事例を提示しながら説明することが確実となります。またそれでもそういった行為に手を染めてしまう人もいるかもしれませんので、その時に懲戒処分をスムーズに実施できるよう就業規則の懲戒項目を整備しておくことが有事の際に役立ちます。

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