社員旅行で有給休暇を消化させる場合の注意点

私の会社は有給休暇を使用して社員旅行をする慣習があるんですが、これは法律上問題ないのでしょうか?

労働法上では労働者との合意があれば使用者による有給休暇の計画的付与の一環とみなされるので違法性はないと考えます。

会社のチームビルディングとして利用される社員旅行は代表的な福利厚生の一つです。一般的に社員旅行中は仕事をしないものですが、その場合でも企業は従業員に有給休暇を消化して参加させることができるのでしょうか?本記事では社員旅行の有給休暇消化に関する考え方について解説します。

社員旅行に年次有給休暇を充てることはできる?

社員旅行をする日に従業員の年次有給休暇を充てることはできるのでしょうか?ベトナム労働法第113条では年次有給休暇の規定があり、同条4項には使用者による年次有給休暇の取らせ方について書かれています。

  1. Người sử dụng lao động có trách nhiệm quy định lịch nghỉ hằng năm sau khi tham khảo ý kiến của người lao động và phải thông báo trước cho người lao động biết. Người lao động có thể thỏa thuận với người sử dụng lao động để nghỉ hằng năm thành nhiều lần hoặc nghỉ gộp tối đa 03 năm một lần.(使用者は、労働者の意見を聞いた後に年次有給休暇の日程表を規定して労働者がそれを知ることができるように事前通知する責任を有する。労働者は年次有給休暇を多数回に分けて,又は最大で3 年分をまとめて1 回で取得することを使用者と合意することができる。)

上記のように事前に労働者との合意があれば、使用者が指定する日に年次有給休暇をとらせることは労働法上認められていますので、社員旅行の日に年次有給休暇を充てることは可能だと解釈できます。したがって社員旅行期間に年次有給休暇を充てる場合、以下の手順に則って確定される必要があります。

  1. 社員旅行のスケジュールを決定する
  2. 従業員に社員旅行のスケジュールを周知する
  3. 従業員の同意を得る
  4. 従業員の年次有給休暇を取得させる

社員旅行に参加しなかった従業員の取り扱い

では何かしらの事情で社員旅行に参加しなかった従業員の場合はどうでしょうか?まず社員旅行に参加するために他の従業員は有給休暇を消化していますので、その期間は労働日と定義されます。ですので従業員が社員旅行に行かない場合は通常通り労働を奉仕する義務があるわけですが、他の従業員が不在である以上、通常と同じように業務を行うのは難しいことが多いでしょう。この場合は社員旅行には参加しなくても労働を奉仕することが難しいという観点から、同じく労働の義務を免れる目的で年次有給休暇を取らせることが合理的だと考えます。

もちろん他の従業員がいなくても通常通り業務に従事できるような環境であるのなら、有給休暇を消化せずに働くという選択も全く問題ありません。

ドタキャンによる損害費用は従業員に請求できる?

社員旅行に参加予定だった従業員が前日などに何かしらの事情で不参加となった場合、交通費やホテル代、食費などに関する損害費用を従業員に請求したり、給料から控除することはできるのでしょうか?

労働法第129条では企業が労働者に対し損害賠償を請求できうるケースについて定義しています。

1. Người lao động làm hư hỏng dụng cụ, thiết bị hoặc có hành vi khác gây thiệt hại tài sản của người sử dụng lao động thì phải bồi thường theo quy định của pháp luật hoặc nội quy lao động của người sử dụng lao động.(使用者の用具、設備を破壊した、又は財産に損害を惹起するその他の行為をした労働者は、法令の規定又は使用者の就業規則の規定に従った賠償をしなければならない。)

この場合ドタキャンによる金銭的被害が上記の「財産に損害を惹起するその他の行為」に当たるかがポイントとなります。客観的に妥当性のあるドタキャン(例:急な体調不良や身内の不幸など)であれば、損害額も旅費一人分とそれほど高額でないことや事前に想定するのが困難な事情であるため、賠償請求は難しいと言えるでしょう。逆に明らかに会社に損害を与えることを目的とした組織的なドタキャンなどは悪質性が高いものであるため賠償請求の対象となりえます。

因みに日本では社員旅行を業務の一環として取り扱うかは会社からの参加強制があるかどうかで判断されますが、ベトナムでは参加の強制性はないという前提で取り扱われます。つまり社員旅行に参加しないことを理由として労働者に不利益な取り扱いをすることは認められていません。社員旅行に有給休暇を充てる場合は事前の計画と労使での相談を十分に行った上で実行するようにしてください。

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