法令基準の休業手当額で納得してもらえない場合

休業手当の支払い額について労働者が合意しません。法令上の最低保証額は満たしていますがどのようにすれば納得してもらえるでしょうか?

法令で最低の休業手当額は規定されていますが、法令通りでは納得を得られないケースも多いです。その提示した額に対して納得してもらえる客観的根拠を準備するのが重要です。

ベトナムの法令では何かしらの理由で業務を行うことができず休業させる場合に休業手当を支払う規定があります。今回は法令で定められている休業手当の規定と考え方について解説します。

休業手当を支払わなければならない条件

まずは法令上、休業手当を支払わなければならないケース、支払う必要がないケースを見ていきます。労働法第99条では各ケースについて以下のように規定しています。

使用者の過失により休業させる場合

この場合は賃金の全額を支払わなければなりません。

労働者の過失により休業せざるをえなくなった場合

この場合は当該労働者に対して休業補償をする必要はありません。しかしその影響により他の労働者も休業しなくてはならなくなった場合、両当事者の合意した水準に従って休業手当を支払わなければならず、その額は最低賃金を下回ることはできないとされています。

使用者の過失によらない特定の条件下で休業しなければならない場合

使用者の過失ではなくても特定の条件下による休業の場合は休業手当の支払い義務が生じます。

特定の条件:停電、断水、自然災害、火災、危険な疫病、権限を有する国家機関の要求に従った損害、活動場所の移動又は経済的理由

これらの条件下では以下のa、bに応じて休業手当の額を決定することになります。

a) 休業が14 営業日以下の場合、休業手当は両当事者の合意により決まりますが、その額が最低賃金を下回ってはいけません。
b) 休業が14 営業日を超える場合、休業手当は両当事者の合意により決まりますが、当初の14 日間については最低賃金を下回らないことを保証しなければなりません。

因みにコロナ禍の隔離措置などで労働者が休業せざるをえない場合は上記「使用者の過失によらない特定の条件下で休業しなければならない場合」に当てはめて休業補償が行われていました。

休業手当の額を決めるポイント

使用者が休業手当を支払う場合にポイントとなるのが「両当事者の合意」です。たとえ法令に規定される最低賃金を下回っていなくても、労働者が合意しなければその金額で決定することはできません。例えば最低賃金に近い賃金で働いている労働者であれば休業補償を最低賃金額としても合意してもらえる可能性は高いでしょう。一方で月給1000USD前後の賃金を得ている労働者に休業補償として最低賃金額で提示しても納得してもらえないかもしれません。

ベトナムの労働法は日本の労働基準法と同じく労働条件の最低基準を定めたものであり、この休業手当に関する規定も最低賃金付近で働く労働者の生活保護を図ることに焦点を当てたものとなっていることが窺えます。つまりある程度の水準以上の給与を得ている労働者の場合は両者での擦り合わせ及び納得させるための根拠が重要となってきます。

納得してもらうためには?

納得してもらうためには最低限以下の2つがポイントとなります。

他の労働者との平等性

その設定額が他の労働者と平等な理由に基づくものとなっているか。ベトナム人は同調性の強い国民ですので、ここは重要となります。

客観的根拠

その額になる客観的根拠。その根拠は具体的であればあるほどよく、法的な根拠や会社の財政状況など数字で提示できるようなものでも有効です。法的根拠として、休業手当の額はベトナムの労働法だけでは最低賃金額以上の規定しかありませんので、参考として日本の労働基準法とベトナムの労働法における休業手当の規定を組み合わせて提示してみるのも一考です。

(日本の労働基準法における休業手当は平均賃金の60%以上が保証される。同法第26条)

ベトナムの法令における休業手当は最低保証額のみが規定されており、両当事者の合意が必要とされていることから条件によっては話がまとまりにくい場合がよくあります。特に一定水準以上の給与を得ている労働者に対しては十分に納得できるための根拠を持って交渉に臨む姿勢が重要となります。

Facebook
Twitter
LinkedIn
Pocket
Email

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA