ベトナム人日本語初級者の誤解を招く表現

日本語が覚束ないベトナム人がよく「仕事を辞める」を「仕事を休む」と言うのですが、これはどういった理由でそうなるのでしょうか?

ベトナム語の「nghỉ」が「辞める」と「休む」の両方の意味がありますので、その直訳からエラーが生じていると思われます。

日本語が堪能ではないベトナム人と話すと語彙の問題から誤解を招く言われ方をされることがあります。大概は文脈から当人が言いたいことを推測することができますが、今回は日本語初級者のベトナム人が間違えやすい典型的なエラーの例を3つ紹介します。

○○さんは休みました。

冒頭の質問にあった「休む」のエラー表現です。ベトナム語では「休む」という表現にnghỉが使われますが、この単語には「(仕事などを)辞める」という意味もあります。

例①:Anh ấy nghỉ hôm nay. (彼は今日休みです。)

例➁:Tôi sẽ nghỉ việc tháng sau.(私は来月仕事を辞める予定です。)

このように「休む」と「辞める」の2つの表現があるわけですが、初級の日本語では「休む」という単語を先に習い、ベトナム語訳は「nghỉ」となっていますので「nghỉ=休む/辞める」と勘違いしていしまいやすくなります。逆に日本人が「nghỉ」を理解する場合、nghỉは「現在の活動を停止する」といった概念で理解すれば語の本質が見えてきます。

例えば取引先にいるベトナム人スタッフの名前を出すと「○○さんは休みました」と言われ、休暇をとっていると思いきや、実は完全に退職した後だったというのはその典型例です。一方ベトナム語では普通に「仕事を休む」などの場合は「xin nghỉ」と言ったり、nghỉに一時的な時制を表す言葉(今日、今週、など)が付くことが多いので「休む」と「辞める」の誤解が生じることは通常ありません。

疲れているから帰ってもいいですか?

仕事をしていると部下から「疲れているから帰ってもいいですか?」と言われることがあります。「え!?そんなの俺も疲れてるんだけど。。。」という話で、何言ってんだこいつは?となるかもしれません。この場合はもちろん「疲れているから帰りたい」と言いたいわけではなく、「体調が悪いから帰りたい」というのは何となく想像がつくかと思います。

ベトナム語では「疲れている」という単語に「mệt」というものがありますが、他にも「体調がすぐれない」「しんどい」といったニュアンスで使われる単語です。これも「体調が悪い」と伝えたいのに、最初に習う「疲れている=mệt」に引っ張られて間違えてしまう典型的なエラーです。

因みに日本人のベトナム語初級者では「体の具合が悪い」という表現に「ốm」をよく使う人がいますが、「ốm」は「mệt」より症状が酷く、寝込んでいる姿を連想させやすいので注意したいところです。これまで一緒に働いてきたベトナム人の使い分けを見ていますと、「mệt」は頑張れば、あるいは無理をすればまだ仕事ができる状態、「ốm」は無理、といった感じでしょうか。。。

もうご飯を食べましたか?

ご飯時に電話がかかってきて「Ăn cơm chưa? (もうご飯を食べましたか?)」と言われることがあります。こう言われると「これから食事の誘いでもあるのか?」と想像してしまいそうですが、これはベトトナム語特有の挨拶表現なので特に深い意味はありません。適当に「もう食べました。」とか「いいえ、まだです。」と返しておけば本題に話が移ります。

ビジネスやフォーマルな場ではあまり聞かれない挨拶ですが、カジュアルな場や間柄ではよく使われる表現です。かなり初歩的な単語のみで且つ日常に根付いた挨拶表現ですので、ベトナム語が分からない日本人でも使いやすく、例えば職場の昼休み明けなどで洒落っ気半分にスタッフに言ってみるとその場の雰囲気が和むでしょう。

以上、ベトナム人日本語初級者が誤解を招きやすい表現の代表例3つを紹介しました。日本語が覚束ない状態でネイティブの日本人上司に日本語で話しかけるのはベトナム人にとってハードルが高い部分があるかと思います。それでもそういった日本語でもコミュニケーションを取ってもらえるような良好な関係性を築きたいものです。

Facebook
Twitter
LinkedIn
Pocket
Email

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA