鬱病になるベトナム人労働者

先日職場のベトナム人で鬱傾向が見られるスタッフがいました。ベトナム社会の鬱状況について知っていることを教えてください。

近年ではベトナム社会でも鬱症状が出る労働者が増えているようで、症状の出やすい業界や職場環境などの調査が進んでいます。

日本では一昔前から鬱病に対する理解が進み、現在では心の強さに関係なく誰でも発症しうる病として認識されるようになりました。一方ベトナムでも労働環境や労働に関する感覚の変化などに伴い鬱病患者が増えていることから、社会的にも放っておけない事象として捉えられています。今回はベトナムの鬱事情について紹介します。

現代のベトナムの鬱事情

保健省管轄の労働衛生研究所の調べによると、毎年約4万人の鬱病を原因とした自殺者が出ているとしています。一昔前では鬱病は親しい仲(家族、恋人、友人など)とのもつれを原因としたものが目立っていましたが近年では仕事に起因する鬱病が多くなっており、個々人が鬱病に対する理解を深めながら対処していかなければならない社会となったとしています。

また仕事に起因する鬱病については、高負荷や持続した緊張を強いられるような業務だけではなく、単調で退屈な業務を長期的に続けているような場合でも発症例が増えていることから、単に仕事の負荷だけでは発症の危険性を測ることはできないと言われています。パソコンを常時使用している業務の他、騒音、化学物質などが使用される労働環境で精神障害、過敏性、不安、鬱病を引き起こす患者が多いことが指摘されています。

他にコロナ禍による失業や収入の低下により鬱病を発症したケースも多く見られ、一時的な社会情勢に応じて鬱病患者が増える傾向もあるようです。業界別にみると銀行、ヘルスケア、建材製造、化学製薬などの業界で発症しやすい傾向があるとされ、今後も同業界における労働環境や労働者の健康状態に関する調査を長期的に実施していく必要があると労働衛生研究所(保健省)の精神生理学部長であるNguyễn Thu Hà氏は答えています。

鬱病に対する企業の取り組みが遅れている

精神的な病を患う兆候が出た場合、労働者はこれ以上深刻になる前に自主的に退職する人が多いので、症状の改善も環境の変化などにより比較的回復が早い傾向があると言われています。これは患者にとっては喜ばしいことではありますが、企業が雇用する労働者で鬱病を患っている者がいるということに気付きにくく、また問題として上がりにくいことから鬱病の発生を予防する労働環境の改善やケアシステムの体制が整備されにくいと指摘しています。

鬱病はあらゆる業界、労働環境で発症する可能性があるということを前提に企業のリーダーはこの点をよく理解して、防止、ケア体制を整えていかなければならないとベトナム労働総同盟のNgọ Duy Hiểu副会長は述べています。

弊社のベトナム人転職希望者でも精神的な事情を理由に転職相談する方は時折見られます。理由が労働環境の問題なのか、たまたま巡り合わせた人間関係によるものなのかは様々ですが今後もこういった問題は増えていくと思われますので、定期的なカウンセリングを実施するなど労働者のメンタルケアに目を向けていくのも一考です。

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