ベトナム人にとってのテト賞与とは?

ベトナム人にとってのテト賞与は日本人にとっての賞与の感覚と何か異なるのでしょうか?

同じ賞与でも名前の通り使い道が「テトのための賞与」という意識が強いです。

先日南部の台湾系製造企業でテト賞与を巡るストライキがありました。特に不当な扱いを同社がしたわけではなく、ベトナム世論も企業に対して同情的な意見が多かったので最終的に労働者の要求を受け入れることなく解決に至りましたが、ベトナム人のテト賞与に対するこだわりの一面を見せた出来事です。今回はベトナム人にとってのテト賞与について解説します。

なぜ13カ月目の給与と呼ばれるか

ベトナムでは暗黙の了解でテト賞与は最低1カ月という習慣があり、それを「13カ月目の給与」と称されることがあります。もちろん企業の業績や個人の成績などでこの額は変わってきますが、一つの目安として「賞与1か月」は従業員も最低限で期待する人が多いです。

仮にテト賞与が1カ月であった場合の使い道ですが、名前の通りテトの期間中に消費されることになります。日本人の賞与の使い道は「預貯金」「生活費の補填」「趣味娯楽費」と続きますが、ベトナム人にとっては「テト期間中の活動費」といった方が多いと言えます。

具体的にどんな出費があるか?

一言でテト期間中の出費と言っても、その人の環境により様々です。ただし多くのベトナム人に共通しているのは以下のような部分になってきます。

・帰省費&上京費→都会から田舎へ、また田舎から都会へ戻る費用。テト期間中は交通機関の料金も跳ね上がる。

・お土産代→都会から帰省する場合は何かしらのお土産を買って帰ることが多く、対象親族の数も多い。

・テトを迎える準備費用→家の飾りつけや、墓参り。その他諸々の細かい出費。

・お年玉→ベトナムは関係性によっては大人にもお年玉をあげる文化があり、額も必然的に子どもより高くなる。

・食費→親族・友人などを家に招いて数日間の宴会。食費も当然かかる。

多くの人は約1週間ぐらいかけてこれらの費用を負担します。ベトナムは親族の付き合いが広く濃いことは有名な話で、それに合わせた出費が必要になるわけです。「テト賞与1か月分」と言ってもワーカー層などの賃金額ではそれが十分でないことが想像できるかと思います。ベトナム人にとってテトを人並みに過ごせないのはその年の幸先の悪さを意味し、死活問題となります。そう考えると賞与に対する要求が強くなるのも理解はできます。

基本給とテト賞与は全く別物と考えるべき

ある日系の会社で基本給が平均水準より高い会社がありましたが、テト賞与の支払いを渋ったことにより大量の離職者が出てしまったという事例があります。恐らくそれ以外の不満もあったのかと思いますが、それが決定的な引き金になったのではと考えられます。当時話をした代表者は

「基本給が高いから、賞与がなかったとしても競合他社と同等の年収ぐらいになるのだか。。。」

と言ってましたが、この理屈はベトナムでは通用しないと考えるべきでしょう。

約2年続くコロナ禍の影響により、賞与の支給について頭を悩ませている企業はたくさんあります。従業員に会社の状況を理解してもらった上で賞与額に妥協してもらわなければならないこともあるでしょう。この場合従業員とのコミュニケーションが特に重要で、一方的な決定を告げるだけでは大きな不信感を抱かせることになります。

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