辞令による転勤に強制性はあるか?

社内事情により従業員を転勤させる必要が出たのですが、辞令により一方的に通達することができるのでしょうか?

勤務地の変更については特定の場合を除いて従業員との合意が前提となりますので、ベトナムでは一方的な転勤命令はできないと考えて下さい。

ベトナムでは複数の拠点を持つ企業でも従業員を転勤させることは一般的ではありません。しかし状況によっては転勤が必要となる事態も発生するわけで、この場合はどのような形で転勤の辞令を出すものでしょうか。本記事では従業員の転勤に関する辞令について解説します。

ベトナムで転勤の辞令を出す場合

ベトナムの労働法第28条には「労働契約の内容に従った業務の実施」について規定されています。その中に「業務を行う職場の場所は当事者間の合意がある場合を除き労働契約に従う」という内容があることから、労働契約書に記載のない場所での勤務は労働者の合意がない限り認められないという解釈になります。

従業員が転勤に合意した場合の処理

企業は辞令を出す前に労働者に勤務地が変更されることを通知し、合意を得る必要があります。同労働者が合意した場合は新たに労働契約書を締結し直すか、現行の労働契約書の付属書といった形で勤務地が変更になった旨を含んだ契約内容に修正する必要があります。

従業員が転勤に合意しなかった場合の処理

従業員が転勤に合意しなかった場合であっても、企業はそれを理由に従業員を直ちに解雇できるということはありません。基本的には合意があることが前提となりますが、その前段階として

・企業がその労働者に対して転勤を命じる合理的な理由があるか

・労働者が転勤を断る合理的な理由があるか

という部分が重要となります。

まず企業側に合理的な理由があるかどうかですが、従業員を最終的に退職に追い込むような、いわゆる左遷目的が明らかな転勤命令は違法性が高くなります。その労働者のポジション、スキル的に転勤先での必要性が客観的に認められる場合や、教育や研修といった要素を兼ねた企業内でのキャリアアップ的な目論見がある場合などであれば不当な転勤辞令とはなりません。

次に労働者が転勤を断る合理的な理由があるかですが、例えば家族や近い身内の世話などで自分がいなければ家族の生活に大きな影響が出る場合、また転勤により現在の家計に著しい影響を及ぼす場合などは一般的によくある合理的な理由となります。

労働者が転勤に合意しなかった場合はこの合理的な理由を解消するために、企業側と待遇面などを含め話を詰めていくことになります。最終的に転勤を受け入れるかどうかの決定権が労働者側に大きく委ねられるというのが日本との違いと言えます。

ベトナムではその企業の運営上、雇い入れの時点で将来的な転勤が想定される労働者も中にはいるかと思います。その場合は労働契約書にその内容を盛り込むことが後々のトラブルを回避するのに大きく役立ちますし、転勤場所も事前に想定できているのであれば具体的な住所あるいは街名などが記載していれば尚良いでしょう。

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