労働安全衛生訓練の受講義務について

企業は従業員に労働安全衛生の講習を受けさせなければならないと聞きましたが、業界、規模に関わらず実施しなければいけないのでしょうか?

法的にはそのようになっています。ただし業界や企業規模によって実施状況に差が見られるのが現状です。

ベトナムの労働安全衛生法では企業は所定の従業員に対して労働安全衛生の訓練を受けさせなければならないとなっています。しかし周りを見ますと実施していない企業もあり、法的義務と実情の乖離が見られます。今回はベトナムにおける労働安全衛生の訓練に関する規定と現状についてご紹介します。

労働安全衛生訓練の受講義務

労働安全衛生法には「企業は、労働安全衛生に関する法律、規則、手続き、措置に関する研修と指導を施す義務がある」と規定されています。内容的に何となく製造業や建設業といった業務災害の起こりやすい業界が対象のように思うかもしれませんが、オフィスワーク系などを含む全業界が対象となっています。

従業員は以下の6グループにカテゴライズされ、それぞれのグループごとに指定された訓練を受けなければならないとされています。

グループ1:労働安全衛生担当の管理者

グループ2:労働安全衛生の実施者

グループ3:労働・傷病兵・社会問題省が指定する労働安全衛生について厳格な順守を求められる業務に従事する労働者

グループ4:グループ1、3、5、6に属さない従業員(見習い、見習い、試用者を含む)

グループ5:医療従事者

グループ6: ATVSLĐ 2015第74条に規定される学生

専門の資格を持った講師から訓練を受けることにより受講修了の証明書が発行されることになっています。またこれらの安全衛生訓練の義務を怠った企業には罰金が定められており、従業員数に応じて100万VND~2000万VNDとなっています。(議定 88/2015/NĐ-CP第17条)

実際の受講状況は?

このような規定があるにもかかわらず実際に訓練を実施していない企業もあるということで、本件に詳しいベトナム人弁護士に聞いた話を紹介します。

まず建設業や製造業では実施されている企業が多くなっており、これは先ほど触れたように業務災害の発生による負傷や死亡の可能性が高い業種であること、また公安や工業団地の管理委員会などによる訓練を規定通り実施しているかのチェックが他業界に比べて厳しいという理由が上げられます。

一方オフィスワーク系の業界ですが、全国的に知名度のある大企業などでは実施されているところが多いものの、そうではない企業での実施率は低くなっています。実際に公安からチェックを受ける機会が滅多にないことなども関係があるようですが、小規模の会社では同訓練未実施の場合でも注意勧告のみで、すぐに訓練を受けるように手配すれば罰金の実施に至らないという実情のようです。こういった事情から同条違反に対する罰金の事例はかなり少ないとのことです。

以上から労働安全衛生訓練の受講義務について、法的には受けなければいけないということになりますが業界、企業規模などにより実施状況にバラつきがあり、実施しているかどうかはその企業に依るという現状になっています。ただこの訓練自体は従業員教育という観点からも有益なものだと考えますので、もし未実施の場合は一度検討してみることをお勧めします。

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