近年のベトナムにおける離婚事情

従業員に何人かベトナム人のシングルマザーがいるんですが、ベトナムの離婚事情はどんな感じなんでしょうか?

時代と共に離婚に対する社会的なハードルが下がってきているなと感じています。従業員でシングルマザーがいる場合は差し支えない範囲で生活状況を知っておいた方がマネジメントの助けになります。

ベトナムの離婚率は低い?それとも高いでしょうか?日本は3組に1組は離婚すると言われている一方、ベトナムは年間6万件、4組に1組が離婚している状況です(2021年)。また近年ベトナムの離婚率は上昇傾向にあり、今後もしばらくは上昇していくだろうと言われています。このような背景には社会的な理由と制度的な理由が関係しているのですが、今回はベトナムの離婚事情について書いていきたいと思います。

離婚率が増えた理由

離婚手続きの明確化

ベトナムでは離婚をする場合、裁判所に出向く必要があり非常に手間がかかります。家庭結婚法第54条では「離婚申し立てを受け入れた後、裁判所は民事訴訟に関する法律に従って仲介しなければならない。」とあります。これは双方が離婚に合意していたとしても最低1度は裁判所へ赴く必要があり、最高で3回裁判所にて各規定の内容を決定していかなければなりません。日本のように離婚届1枚出せば離婚成立という簡単なものではないので、手間や金銭上の兼ね合いから戸籍上は婚姻状態にありながら、事実上離婚状態にあるという夫婦はそれなりにいたのがこれまででした。

ただ現在は離婚率の上昇によりそれをサポートするコンサル会社が増えたこと、またインターネットの普及により離婚手続きの情報を入手しやすくなったことにより、きちんとした離婚手続きを取る夫婦が増えています。こういったことから離婚率が数字としてカウントされて上昇につながっているとも言えるでしょう。

社会的な事情

かつて離婚は「するものじゃない」「みっともない」「恥ずかしい」という考え方が一般的でした。一昔前は同じ村内で結婚をする人も多く、離婚してしまうと同じ村内で話が広がることや、離婚後にたとえ実家に帰ったとしてもかつての配偶者やその親族と顔を合わす機会がついて回ります。また親が相手を見つけてきた結婚などであれば親の顔に泥を塗ってしまうという考えもありました。そういった日常生活の影響が多分にあることもあり、離婚というものがそもそもの選択肢になかった人はかなりいたのではないでしょうか。

しかし現在は互いの故郷が離れていたり、経済的に自立できるような所得層が増えたこと、また離婚数そのものが増えたことによる周りの理解が進んだことなど、「耐える」ことに対する必要性が下がったと言われています。

自由恋愛と自由離婚の時代へ

私個人的に現在ベトナムは結婚概念について丁度過渡期を迎えていると感じています。近年では「長男は家を継ぐ」「子どもはたくさん持つべき」「子どもは男が重要」「同郷の者と結婚すべき」といった一族繁栄に関する考えを強要する親は減ってきました。また親が結婚を決めるのではなく子ども同士の自由恋愛による結婚が一般的となっています。結婚後も親や親族に縛られない、核家族の家庭も増えています。

その一方で「結婚しなければいけない」という考えを持っている人は日本のそれよりもまだまだ多く、ある程度暗黙の年齢的な上限があることから、勢いで結婚、その後離婚へという流れがあるようです。かつては勢いで結婚しても上で書いた事情などから離婚に踏み切る人が少なかったわけですが、最近はこのような縛りが緩くなったことも離婚が増加した一因と考えられています。慎重になりすぎて未婚、または晩婚が進むこともありますので、その辺りのバランスは中々難しいところです。

ベトナムでは夫婦共働きが普通で、都会であれば夫婦の所得割合にそれほど差がない家もよくあります。離婚すると経済的には厳しくなるがケースがほとんどですが、それでも子どもを引き取って自立できるような人も以前と比べて多くなりました。これに伴い再婚の割合も増えており、「結婚」に対する新しい価値観を迎えていると言えそうです。

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