新暦と旧暦の中で生活するベトナム

時々ベトナム人から旧暦の日程で話されることがあるんですが、ベトナム人は常日頃から新暦と旧暦の両方を頭に入れて生活しているんでしょうか?

今の時代ほとんどのベトナム人は新暦で生活していると思ってください。ただし特定の催しごとについては陰暦で記憶していることが多く、人によってはそれを新暦に換算せずに話す人も見られます。

我々日本人がベトナムで最も旧暦を実感するのはテトではないでしょうか。毎年テトのタイミングが新暦上では異なりますので、その年ごとにテト休みの時期を確認することになります。一方でベトナム人の頭の中ではこの新暦と旧暦の区別はどのようになっているのでしょうか。本記事では一般的なベトナム人の旧暦に対する概念を紹介します。

そもそも旧暦とは

まずは簡単に「旧暦」についておさらいしたいと思います。

新暦

現在日本を含む多くの国で標準として採用されている暦、つまり私達が日頃見ているカレンダーに沿ったものはグレゴリオ暦といい、太陽の動きを基に計算されています。このことから「太陽暦」とも呼ばれ、日本では1873年から新暦が採用されるようになりました。

旧暦

一方グレゴリオ暦の前に採用されていた暦は旧暦といい、こちらは月の満ち欠けを基に計算されていることから「太陽太陰歴」とも呼ばれています。現在でも東アジアを中心に旧暦に則った文化が残っており、特に中国やベトナムでこの傾向が強いことから英語では「Chinese calendar」や「Vietnamese calendar」とも表現されます。

余談

上記のことから2つの暦は「新暦」「旧暦」または「陽暦」「陰暦」として区別されます。ベトナム語では「dương lịch」「âm lịch」と言われ、日本語に直訳すると「陽暦」「陰暦」となります。日本語が分かるベトナム人の中には日本語で「新暦」「旧暦」と自ら言うのを好まない人がいるそうで、理由としては

「自分たち(ベトナム人)にとって「âm lịch」は(旧)ではなく現在も普通に使用されているため。」

ということだそうです。この感覚を持つ人は相当なこだわりがあるごく一部に限られると思いますが、私もベトナム人と日本語で話をする際は一応尊重のため「陽暦」「陰暦」を使うようにしています。

ベトナム人が旧暦を使うとき

現在はベトナム人も基本的に新暦に則って生活していますが、要所要所で旧暦に換算して催しごとを行います。その代表例を4つ紹介します。

テト

言うまでもなくテト期間中は多くのベトナム人が旧暦に則って動きます。この時期は頭の中のカレンダーが旧暦モードに切り替わっていると思って間違いないでしょう。大体旧暦の12月20日(新暦では今年の1月11日)ぐらいから頭の中でカレンダーの切り替えが始まり、年末年始の期間はベトナム人に「今日は新暦の何月何日か?」と聞いてもすぐに返事が返ってこないことが普通にあります。会社のテト休み日程も新暦ではなく旧暦で頭に入れている人も珍しくありません。

故人の命日

ベトナムでは亡くなった日は旧暦で記録される習慣があり、その後に続く法事も旧暦換算で行われます。なので法事の日程は新暦換算では毎年変わることになりますので、喪主などは法事の時期になると忘れずチェックしておかなければなりません。

結婚式

結婚式の案内などを見ると新暦と旧暦の両方がよく記載されています。ベトナムでは一般に人生の節目となるような催しについては陰暦表記されることが多く、その催しが新暦が採用される以前から文化的に行われているものは陰暦も併記されることがよくあります。年配の方の話では「昔は陰暦表記だけだったが、新暦が普及した現代で陰暦表記だけにすると日程を忘れられたり勘違いされることもあることから現在は新暦を併記するのが普通になっている」とのことです。因みに結婚記念日について若い世代は新暦で認識していることが多く、旧暦世代の年配層はそもそも結婚記念日の概念がないそうです。

祝日、祭日

ベトナムの祝日で新暦が採用される前からあるものは現在でも旧暦で認識されています。代表的なのは旧暦の3月10日(新暦では今年の4月29日)に当たる「フン王の記念日」でしょうか。それ以外の祝日は解放記念日など植民地時代のものになりますのでこちらは新暦で毎年認識されています。またベトナムには祭日がたくさんありますが、休みにならないことから外国人や若いベトナム人世代にはあまり馴染みのないものとなっています。これらは歴史的なものが中心なことから旧暦換算のものが多くなります。

ベトナムでは社会の国際化が進むにつれて旧暦は特定の時期だけに認識されるものになりつつありますが、テトを代表にベトナム人にとって大切な日は今でも旧暦での認識が根差しています。旧暦に沿ったベトナム人の習慣を知ることも、またベトナム人を理解する一助となります。

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