AIツールを使って日本語の履歴書を作成することについてどう思いますか?
書類選考時点における当人の言語能力の判断がつきにくいのは厄介ですが、時代の流れとしてこれは受け入れるべきかと思っています。極端に質の高い書類を作ってしまうと相手先に過度な期待を持たせることになる自覚はもっておくべきでしょう。
ChatGPTを筆頭にAIツールがかなり普及してきました。書類などの文章作成には抜群の効率性をもたらし、日々の業務負担の軽減にも寄与しています。一方で履歴書レベルから言語能力を測ってきた立場としては、当人の能力を事前に判断するのが難しい時代になってきたとも思っています。今回はAIツールを使用して作成された履歴書を見て感じることを書いていきます。
きれいな履歴書を見る機会が増えた
ベトナム人が作成する日本語の履歴書について、最近レベルが上がっているなと感じています。レベルが上がったというのは、単純に日本語で違和感のないレベルのものが提出される機会が増えたということです。名前や生年月日、学歴&職歴などの記載は簡単なので、定型の書き方を理解すれば日本語力の差はほとんど出ません。最も差がでるところが職務経歴内容の部分です。
職務経歴は十人十色で、テンプレートのような形での作成が難しいです。定型の形で書こうとすると簡素な箇条書きのようになってしまい、当人の経歴が伝わりにくいものとなります。逆に詳しく書きすぎてしまうと冗長になりやすい他、日本語力の兼ね合いから読みにくい印象を与えてしまうこともあります。
この辺りのバランスを見事にクリアした立派な日本語の履歴書を見る機会はこれまで限られていましたが、最近では悪い意味で履歴書の出来と当人の日本語力が合致していない人材に出会う機会が増えてきました。
ChatGPTで履歴書を作ったベトナム人の話

履歴書は立派、でも話してみるとどうも本人が作ったとは思えない日本語力。私が面談したベトナム人でその部分について突っ込んでみると、素直にChatGPTで履歴書を作成したことを話してくれました。今や日本人も日本語の履歴書作成にAIを使う時代です。私としてはその点を責める気はなく、トレンドとして興味がありましたので色々話を聞いてみました。
職務経歴はキーワードから作成
職務経歴は自分が経験した業務についていくつかのキーワードを日本語またはベトナム語で入力し、それを文章化させることで対応。箇条書きにするか、文章形式にするかはその時々に応じて作成するようですが、働いた会社の情報なども前提条件として伝えることにより、自分が実際にした業務内容により近いものが出来上がってくるので助かるとのこと。
翻訳も優秀
志望動機や自己PRなどは自分でベトナム語の文章を一度書き、それをAIに翻訳させて記載していました。その際に応募する会社の情報なども事前に伝え、志望動機や自己PRがその会社の特性にマッチするようにアレンジさせるような指示も出したそうです。
テンプレートのサンプルが不要
AIツールの出現により、ネット上に散在している日本語履歴書用のテンプレートが完全に不要になったと言っています。昔は一言一句同じ自己PRが書かれた履歴書を幾度と見ましたが、こういったものもどんどん廃れていくのでしょう。そもそもそのテンプレの自己PRを採用の判断材料にしている日本人がどこまでいるか疑問ではあります。仮にそれに惹かれる採用者がいたとしたら余程ベトナム経験のない日本人かと思われるので、昔からコピペの自己PRはほぼ無意味なものだとは思ってます。

こうして見るとかなり日本語力の高い人材が作成した履歴書と錯覚してしまいます。そういう意味でAIツールを使っての履歴書作成は、自分で相手先の期待値をかなり上げてしまうことにもなりそうです。とは言うものの、AIツールを使いこなすのは今後もれっきとしたスキルの一つになりますので、無碍にこの行為を否定する気にもなりません。
人材紹介の立場として
人材から提出された履歴書を企業先に提出する場合、その扱いは紹介会社によって①~③のパターンがあります。
①「紹介会社側で修正してから提出するパターン」
②「修正せずにそのまま提出するパターン」
③「場合によっては修正し、場合によってはそのまま提出するパターン」→当社は③のスタンスです。
①はとにかく書類からの第一印象を良くし、面接へ進めやすくする目論見があります。その紹介会社独自のフォームを使用して提出するところも多く、履歴書修正専門のスタッフが雇用されているような会社もあります。同じフォームや書き方で履歴書が届くので、複数の候補者を比較検討する場合は見やすいという評価もあります。
②は色々な理由があると思いますが、ローカルの紹介会社にこのパターンが多い気がします。
③は当社の場合ですと、人材から提出された履歴書はその人材そのものを表すと思っていますので、できればそのままの形で相手先に見てもらいという思いがあります。ただし内容によって、当人のアピールポイントが伝えきれていなかったり、読みにくいと判断した場合は加筆修正することもあります。極端に質の低い履歴書(書く気がないように思わせる怠惰な履歴書)の場合、書き方を教えて再提出するよう伝えています。(ここで真摯に書き直してくるような性格の人材かどうかも一つの判断材料にしています。)
このように履歴書の修正処理が作業の一つとなっている紹介会社は少なくありませんが、今後AIツールを使った履歴書作成が普及すると、この必要性がなくなってくるのかもしれません。とは言っても目利きの専門家としてはAIで作成された履歴書からも何かを感じ取るための能力が必要にはなってくるでしょう。
現在のAIでは時々不自然な文章でできあがってくることが依然あるものの、その不自然さが逆に外国人が作成した日本語のように感じられ、自然に思えてしまう逆説的なこともあります。この辺りをどのようにして見極めていくか、ネイティブとして日本語の書類は判断しやすいものの、英語やベトナム語のような外国語に対してはどのように判断していくべきか、などなど。また新しく学んでいかなければいけないことが出てきたと感じる昨今です。